年功序列は能力主義だという事実

かつての日本の給与制度は年功序列が主体でした。

今では「うちの会社は年功序列です」と公言する会社はありません。

「年功序列」という言葉にマイナスのイメージがあるからです。

そのかわり「うちの会社は能力主義です」という企業はまだまだ多いようです。

その言葉に騙されないようにしましょう。

年功序列は能力主義の一種です。

年功序列と思われないように能力主義を運用している会社は「こんなことなら年功序列の方がよかった」というような「劣化版年功序列」になっているかのうせいもあります。

年功序列は能力主義の一種だという事実

まず、年功序列は能力主義のひとつだということを説明します。

能力主義という言葉はどのように受け取られているのか

ブリタニカ国際大百科事典の能力主義の項目をみてみましょう。

能力主義
個人の能力評価に重点をおいて昇進,昇給を決定する考え方。これまで日本の企業の特徴とされてきた年功序列制,学歴主義といった属人的要素による評価と対照をなす。
ブリタニカ国際大百科事典小項目事典の解説

能力主義は年功序列制、学歴主義といった属人的要素による評価と対象をなす」と書かれています。

「能力主義は年功序列とは全く違うものじゃないか」

と思われるかもしれません。

それは勘違いです。

元々、年功序列は能力主義の一種なのです。

しかし、それまでの年功序列と違うタイプの能力主義というものが現れて、それを強調されているうちに間違った使い方になってしまっているのです。

そもそも能力主義とは

そもそも能力主義とは何でしょう。

「その人の能力に応じて賃金を決める制度」

これが能力主義です。

それ以外の賃金制度としてはどんなものがあるでしょうか。

  • 成果主義:仕事の成果に応じて賃金を決める制度
  • 職務主義:仕事の内容に応じて賃金を決まる制度

このふたつが主なものです。

成果主義は、主にホワイトカラーに適用されるもので、成果に応じて賃金を払うものです。

フリーランスに近い形態だと思っていいでしょう。

職務主義は、主にブルーカラーに適用されるもので、同じ仕事をしている人には同じ給料を払うという「同一労働同一賃金」の考え方です。

大変な仕事ほど給料が高く、簡単な仕事ほど給料が安いということになります。

年功序列は

能力主義の考え方は「人に応じて賃金を決める」というものです。

仕事の内容や成果ではなく、Aさんの給料はいくら、Bさんの給料はいくら、というように人によって給料が決まるというのが大きな特徴です。

「Aさんは能力が高いから給料も高い」
「Bさんは能力が低いから給料が安い」

といった具合です。

年功序列も「人に応じて賃金を決める」という点では全く同じです。

そして、かつて年功序列だと言われていた企業の賃金制度は「能力主義」と呼ばれていました。

人の能力という判断が難しいものを基準にしていたため「長く働いている人ほど能力が高いだろう」という判断になっていたということです。

年功序列制度の実際

かつて、実際に年功序列という賃金制度があったわけではありません。

あったのは能力主義です。

多くの会社では、能力に応じて等級とが号級と呼ばれる級を導入していました。

入社してから、能力に応じて級が上がっていき、それに応じて給料が増えていくという仕組みです。

級を上げるかどうかは、上司の判断です。

「この人は、ずっと級が上がっていないのでそろそろ上げてやろう」

と考えるのは人情です。

会社によっては「あまり長く昇級しない人がいると雰囲気が悪くなる」などの理由で、一定の期間がたてば自動的に級が上がる場合もありました。

結局、仕事ができる人もできない人も、級が上がる時期は多くても数年遅れ程度という実態になり、年功序列と呼ばれるようになったのです。

なぜ日本は能力主義なのか?

なぜ日本は能力主義だったのでしょうか?

日本では職に就く就職ではなく、会社に入る就社だと言われます。

会社に入ったら、会社のために働くというスタイルです。

これが、高度成長の原動力になりました。

そのために、能力主義になったのです。

人事異動を考えてみればわかりやすいと思います。

日本では、会社からの指示によって、職場を異動するのが当たり前です。

もし、職務主義なら異動によって給料が変わります。

仕事が変わるのですから、仕事内容によって給料が決まる制度では当然です。

異動によっては、給料が下がることもあるでしょう。

それでは、簡単に異動させつわけにはいきません。

成果主義ならどうでしょう。

これも異動で給料が変わります。

慣れた仕事から慣れない仕事に変われば、成果が落ちて給料が下がるのが当然です。

自由に人事異動させるためには「あなたの給料はいくらです」と決まっていて、仕事内容が変わっても給料がそのままというスタイルにしておく必要があったのです。

見かけの制度にだまされないようにしよう

現在、多くの企業は「年功序列ではない」と公言しています。

年功序列とは違うタイプの能力主義を謳っているところもあります。

しかし「自由に人事異動させる」という権利を手放さないまま、年功序列を廃止するのは大変です。

「営業スキルの高い人を工場勤務にさせても給料は変わらない」ことに対して、説得力ある説明ができなければなりません。

「長く働いている人ほど能力が高いだろう」というのは乱暴な評価ですが、それよりも説得力が高い評価を行うのは簡単ではないのです。

それに失敗すると「まだ年功序列の方が良かった」ということになりかねません。

年功序列より能力主義の方が望ましいと単純に信じてはいけないのです。